~i-Construction(アイ・コンストラクション)への展開~ 「潤(ウル)トワシステム」を用いたコンクリートの養生を実施

早川ゴム株式会社(本社:広島県福山市 社長:横田幸治 以下早川ゴム)は、ニシム電子工業株式会社(本社:福岡県福岡市博多区 社長:山科秀之 以下ニシム電子工業)、株式会社A・R・P(本社:神奈川県秦野市 社長:笹子吉隆 以下A・R・P)および高田機工株式会社(本社:大阪府大阪市浪速区 社長:髙橋裕 以下高田機工)と共同で「潤トワシステム」を開発しました。 この潤トワシステムは、打設したコンクリートの品質を確保しながらも湿潤養生工程の簡略化を可能とした新しい技術であり、この度、高田機工が受注した令和2年度静間仁摩道路大国地区鋼上部工事に、この新技術を導入しました。


打設後のコンクリートは、養生を行い、コンクリート表面を湿潤状態に保つことによって表面が緻密化し、ひび割れの少ない高品質なコンクリートになることが可能となります。既に早川ゴムは、打設後のコンクリートにおける品質確保を目的とした保水性養生マット「アクアマット」を販売しています。 アクアマットは打設後のコンクリートへ確実に水を供給する為に、水分を保持できる吸水層と、保持した水分を揮発させない遮水層から構成されている複層型のマットとなっており、先駆的な養生マットとして市場に流通しています。 アクアマットは高い保水性能を有していることから、高品質コンクリートの作製を実現できると同時に、コンクリートの養生現場における散水回数を大幅に低減できる優れた養生マットです。 しかし、養生期間が長い場合や夏場の炎天下では、アクアマットの保水状態を視認し、場合によっては再度散水する必要があります。 現在この作業は現場の作業者が実施しており、4週8休制の導入が進む中、休日の散水作業が困難になります。建設業では、労働者の高齢化と若手人材の減少とが重なり、労働力人口が減少しています。 現場の作業負荷を低減し環境改善を図ると同時に、構造物の長寿命化に必要な品質の確保を両立して実現する技術の導入は必要不可欠となります。

そこで、国土交通省が進めているi-Construction(アイ・コンストラクション)「建設現場にICTを活用しようとする取り組み」を活用するために、コンクリートの養生においてIoTを導入して現場の作業を遠隔確認・記録し、コンクリート養生での散水までを管理できることが可能な「潤トワシステム」を開発しました。 「潤トワシステム」はアクアマットの保水量をセンサーで計測し、定期的にクラウドへデータをアップロードするとともに、保水量に対して閾値を設定し閾値以下になると散水、適切な保水量の確保によって散水を停止するシステムです。 散水の自動化のために、養生を行うコンクリートの対象面は勾配を有することが条件となります。 また、アクアマットの各保水量におけるコンクリートの養生とコンクリート表面の緻密度とに相関性があることが実験的に得られていることから、保水量をデータ管理することで、コンクリートの品質確保も実現しています。 センサーの値をクラウドに転送する技術は広く使われているものの、従来、コンクリートの養生マット(アクアマット)の保水量を測定する技術は存在していないと思われます。 また、これまでコンクリートの湿潤養生は相対湿度で管理する指標のみとなっており、空気層を有しない湿潤養生において、相対湿度を計測すること自体困難です。 そこで本技術では土中水分センサーに着目し、アクアマットの保水量を定量的に計測できるセンサーを開発しました。 現場へ設置するハードウェアとクラウドへのデータ転送をニシム電子工業、アクアマットの保水量(養生マット含水率)を計測するセンサーをA・R・P、システムを利用した養生におけるコンクリートの品質確認を早川ゴム、現場での作業性の確認を高田機工が担当をし、新技術の構築が実現しました。



 本システムは、2022年8月に公共工事等における新技術活用システムNETISへの登録が完了しています(QS-220009-A)。
 潤トワシステムで使用するハードウェア・クラウド・センサーに関しては、計測器・測定器レンタルの株式会社レックス(住所:兵庫県西宮市西宮浜 社長:正垣嘉之)が販売窓口となります。

  システムを利用した高田機工の現場代理人の類家氏は、 「今回の現場では当初、養生期間中は最低、朝夕2回の散水を行う計画でした。 コンクリートの湿潤状態によっては散水回数が増えることもあり、そのたびに作業員が1時間程度、養生に専念する必要があります。 また、品質に影響するため、土日祝日に係わらず、現場に出向き散水を行う必要もありました。 今回、潤トワシステムを採用することにより、上記の作業において、改善を行うことが出来ました。 システムの設置作業は、養生水を用意し、専用のホースとセンサーの配置を行うだけであり、作業時間は10~15分程度です。 その後はセンサーで養生マットの含水率を計測し、管理値を下回れば自動で散水されるため、水タンクへの給水さえ行えば人力作業は特別必要ありませんでした。 計測値はクラウド上に常時記録されるため、自宅や事務所にいても含水率の確認ができます。 ブラウザでの操作で散水を行うこともできるので休日に現場に出向く必要もありません。 このため、養生管理の省人化・省力化に寄与できると考えています。」と述べています。

 NETIS登録後、各社から問合せをいただいており、開発担当者は反響の大きさに驚いています。 潤トワシステムは、ICTの活用よるコンクリートの品質確保と現場の作業負荷低減を同時に可能とした新しい技術であることから、働き方改革への一助となることを期待しています。 また、新しいニーズとの掛けあわせによる開発例として、さらなる展開を考えています。